未来への希望が込められた ミャンマーコーヒー
ここ数年で著しい発展を遂げ、今後も品質の向上が期待されているミャンマーコーヒー。
当店でも2019年のオープン当時から現在までずっと取り扱っている思い入れのあるコーヒーです。
今回はそんなミャンマーのコーヒーをご紹介していきます。
■ ミャンマーコーヒー の特徴
コーヒー産地としてのミャンマー
コーヒーベルト内に位置しており、標高の高い山々を有しているミャンマーは元々コーヒーの生産に非常に適した環境にありました。最も生産量の多い地域は、北東部のシャン州で自然豊かで農業が盛んな高原地帯になっています。
ただそのような環境にありながらも、お茶を飲む文化が主流であったミャンマーではコーヒー生産はこれまであまり盛んに行われてきませんでした。近年の急激な経済成長と産業のグローバル化が進む中、コーヒー産業も徐々に活性化し始めましたがまだまだ発展途上といった状況のようです。
しかしアジア最後のフロンティアとも呼ばれるミャンマーは、そのコーヒー生産地としてのポテンシャルの高さから今後益々世界から注目されていくでしょう。
味わいの特徴
ミャンマーコーヒーの特徴としては、アジアのコーヒーに多く見られるような「土っぽいコクのある味わい」はあまり感じられず、どちらかというと中米産のコーヒーに近いクセのない味わいが特徴です。
■ミャンマー唯一のコーヒー社会起業「ジーニアスコーヒー」
ジーニアスコーヒーの目指すサステナブル
当店のミャンマーコーヒーはジーニアスコーヒーのものを扱っています。
ジーニアスコーヒーとは、代表のゲトゥンさんがコーヒーでミャンマーの農業の問題解決と発展を目指し設立した、国内唯一のコーヒーによる社会起業の会社です。近年著しい発展を遂げてきたミャンマーですが、それでも多くの国民は農業に従事しており、農業によって支えられている国であるから、農家さんたちがサステナブルな生活ができなければ国は豊かにはならないと考えたゲトゥンさんは大きな可能性を秘めた作物であるコーヒーに着目し、ジーニアスコーヒーを創設しました。
ジーニアスコーヒーはこれまでコーヒーの品質向上のために農家さん達に栽培、収穫、加工、病虫害対策などのワークショップを行ったり、加工場を新設したりと様々な取組みを実施してきました。また農家さん達の収入が少しでも増えるようにと農家さん達自身でコーヒーの1次加工まで行い、より高値で販売できるような支援も行ってきました。
ジーニアスコーヒーの目指すサステナブルな取組みに共感したことも、このミャンマーコーヒーの取扱いを決めた一因になっています。
アグロフォレストリー
ミャンマーでは農家さんたちの多くが自分の土地にいくつかの作物を育てていて、その中のひとつとしてコーヒーも一緒に育てています。ジーニアスコーヒーにコーヒーチェリーを持ち込む農家さんもこういった農家さんがほとんどです。
このような農法は「アグロフォレストリー」と呼ばれ、約20種類もの作物が自然のままの森の中で育てられています。
アグロフォレストリーによるコーヒー栽培の特徴として、バナナなどの背丈の高い作物がシェードツリーとなることでコーヒーの木が直射日光から守られたり、十分な日陰があることで生長スピードが遅くなる分、甘みが豊富に蓄えられるなどの利点があるそうです。
また森が守られることで気候変動への対策にも繋がるなど、環境負荷の少ない持続可能な農業であることも大きな特徴です。
■ファヤギコン村のコーヒー
ファヤギコン レッドハニー
現在当店で取り扱っているコーヒーが、「ファヤギコン村」のコーヒーです。
このファヤギコン村はシャン州の中でも最大級の生産量を誇るユワンガンという地域にあります。標高が1,400〜1,600mという高地に位置しており、朝晩の寒暖差が甘みの詰まった品質の高い完熟豆を育てています。
この村の生産者グループのリーダーを務めるのがゾウミョウナインさん。コミュニティでの品質向上はリーダーの働きに大きく左右されるそうですが、その点でゾウミョウナインさんは責任感が強く信頼もあり、誰よりも働いてくれるおかげで安定して品質の高いコーヒーを作り上げることができているとのことです。
コーヒーの実から種(コーヒー豆)を取り出す工程にあたる、精製方法はレッドハニー。このハニー製法ではミューシレージという種の周りの粘液性物質を残して乾燥させるため、乾燥中にベタつくのが難点ですが、ファヤギコン村の生産者さんたちは文句ひとつ言う事もなく一生懸命に加工に取り組んで下さっているそうです。そうした努力によりハニー製法特有の甘みと香りがしっかりと感じられるコーヒーに仕上がっています。
生産地との交流
2022年のSCAJ(アジア最大級のコーヒー国際見本市)にジーニアスコーヒー代表のゲトゥンさんと品質管理部長のチャインコーさんが来られ、セミナーを開催されるとのことで参加してきました。
セミナーではミャンマーコーヒーの現在地やこれからの展望など、現地の生の声を聴くことができ大変貴重な機会となりました。
またゲトゥンさんに直にお会いできるまたとない機会であったため、僕が普段お店で焙煎しているファヤギコン村のコーヒーを持参し、お渡しさせていただきました。ジーニアスコーヒーの皆さん、そして可能ならばファヤギコン村の生産者の皆さんにも届けていただき、日本でミャンマーのコーヒーはこのように焙煎され、飲まれ、多くの方々に楽しんでもらっているということ、また美味しいコーヒーを日本へ届けてくださっていることへの感謝の気持ちをお伝えしたいと思いました。
この申し出にゲトゥンさん、チャインコーさんは非常に喜んでくださり、必ず生産者さんまでお渡ししますと快諾してくださいました。そして後日、実際に生産者さんにお渡しできたことを写真つきでご報告くださいました。
農作物の供給というのはどうしても一方通行になってしまいがちだと思います。国境を越えるとなおさらです。今回生産者さんに僕の焙煎した豆とコーヒー生産への感謝の気持ちをお伝えすることができ、大変有意義な機会になりました。
この先もファヤギコン村のコーヒーを日本のコーヒーラバーの皆さまに楽しんでもらえるよう、取り扱いを続けていきたいと思います。きっと年を追うごとに品質は向上され、益々美味しいコーヒーを日本へ届けてくれることと思います。
■未来への希望となるコーヒー
コーヒーとは「ルビーのよう」
SCAJでのセミナーの際、ゲトゥンさんはこのようにおっしゃっていました。
「世界中で愛され、市場も拡大を続けているコーヒーには大きな可能性が秘められている。ミャンマーの農家にとってコーヒーはまさにルビーのようなものです。」
ミャンマー国内では今も緊迫した情勢が続いています。
そのような中、農家さん達は未来に大きな不安を抱きながらも希望を失わず日々生活を送っています。
コーヒーが彼らにとっての希望であり続けることを願っています。